30年も前のことだ。
体育が不得意だった少年時代のぼくは夏のプールも嫌いだった。
意地悪なほど冷たい水は、フェンスからはみ出しているヨモギの色とさして変わらず、泳ぐのは朽木色のミズカマキリだけでいいと思っていた。
そのくせプールの時間はいつだってあっという間に過ぎていた。
紺色の水着と対照的な白い手足。パァッっと息つぎをする朱い口。
跳ねる水は澄んでいた。
手をかざして見上げる夏空は青くて切ない。
動かなかった夏の恋は、今も青いままで空にある。
■東京から一番時間距離のあるまち、岩手県宮古市のとある庭から見える田舎の風景を。
08/03/2012 10:30
僕は水に流してきたよ
08/03/2012 11:27
水洗だったか。