チン。
職場の端にある電子レンジがアナログな音で業務遂行を告げた。
──時間を遡ること、3分。
上司は自分の愛妻弁当を年代物の電子レンジに入れ、時間設定のダイアルをひねった。
レンジが働き始めたブーンという低い音が聞くともなしに聞こえる。
ほどなく「ちょっくらダイソー行ってくるわ」と言い残し上司は職場から出ていった。
ブーン
発注者が不在となっても仕事をやめない電子レンジが間抜けに思えた。
なにかよくわからないものが入った大きいレジ袋とともに上司が帰社し、何事もなかったかのようにレンジの中から愛妻弁当を取り出して食べだしたのは、ダイアルを回して30分ほど経ってからだった。