無機質、硬質、シャープ、ソリッド。
子供の頃から贅肉のないカチッとしたアタラシモノが好きだった。
それがいつからだろう、二十代の後半あたりからだろうか、明らかに変化した。
目を奪われるもの、手にとるもの、心惹かれるものなどが変わったのだ。
ゆがんで、いびつで、遊びがある有機的なデザイン。
それは、やわらかくどこかあたたかい、古いものにありがちな味わいだ。
これはいったいどういうことなのだろう。言ってみれば真逆じゃないか。
好みなどというものはそこまで変わるものなのか。
改めて考え、少し不思議に感じたのだった。
光沢剤など使っていないのに光沢を放つ自分より年上のベンチ。
開くと昔の匂いがする本の粗い紙質と均一ではない印刷。
フィルムやレコードのスクラッチノイズ。
風化し褪色した写真。
老人の皺。
どうしてだろう。
どれもちょっぴり泣きそうになる。