近頃、昔のことを思い出すことが多い。
なにがそうさせているのかはわからない。
盛岡市を出たのは日が落ちてからだった。
真っ白な満月を映して妖しく光る真っ黒い路面を見て、もう一時間早く発つべきだったと小さな後悔をした。
それにしてもなんて明るい夜だろうか。
道路も空も眩しく輝いている。
ブレーキを踏まないよう、急なハンドル操作にならないように気をつけつつも、大きく美しい月に目を奪われがちだった。
そういえば子供の頃に思ったものだ。
「月がついてくる」
単純に不思議だった。
そしていつのまにか「月がついてくる」と思わなくなっていた自分に気がついた。
月はあの頃からなにも変わらずついてきていた。
月の写真を撮るなんてとんでもないほどの危険な道だったことを表す文とは無関係の写真。