とねりの庭

下々ノ者ノ下ノ庭


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愛執。

別れを告げ、背を向けた。
じゃあなと言った舌の根も乾かないうちに次の恋を見つけた。
私は実に薄情な男である。

背を向けたはずの後ろを振り返ると、前の彼女が立っていた。
少しも変わらないまぶしい笑顔がそこにある。
私は実に未練がましい男である。
次の恋のスタートは、もうちょっと後からにしよう。
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撮ってて楽しい夏らしい写真も、タイミングが合わなかったり、忙しかったりで思うように撮ることができずにいたのだが、ここに来て好きな夏風景に出会う日々だ。

始まりの遅かった今年の夏。なにも楽しめないままにお盆が来て、9月の声が聞こえた。
半ば腐り気味に夏の悪口だけ言って、自分の中ではもう終わったものとして処理したりして、今思えばひどいことをしたもんだと思う。
夏は寛容だ。こんなにも勝手な私を許してくれる。
ちょっぴり申し訳ない気持ちはあるけれど、もう少しだけ夏と一緒にいようと思う。
今度は夏のほうから去ってゆくまでじゃあなは言わないでおこう。
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盆点描。

地獄の釜の蓋が開くといわれるのに、こうして休まず更新するのはいかがなものかと思いながら、わが宮古市のお盆風景をご紹介。

「松明かし」という風習をおさめようと思い、退社の足でまちを歩くと、目的の風景より先に盆踊りの会場を見かけたので立ち寄ってみることにした。
会場には、準備している先輩方が4人。挨拶をすると、笑顔で迎えてくれた。
「若い人が減ってね、準備も大変だでば」
そう語ったおじいちゃんの笑顔は、どこかうきうきしているようできれいだった。
腰の曲がったおばあちゃんが、ひょこひょことやぐらへ進む。手慣れた手つきでCDラジカセを操作すると、スピーカーから炭坑節が流れた。
「今のうづに鳴らしておげば、ほれ、盆踊りだって思って来んのす」
やっぱりいい笑顔のおばあちゃんがくしゃっと顔をゆがめながら教えてくれた。
訊けば、開始までまだしばらくあるということで、お礼を言っておいとましたが、ここで老若男女が踊る様子をスローシャッターで撮れば……と逡巡したのはたしかだ。

松明かしは宮古の文化。
軒先で松の木っ端を燃やし、先祖の御霊をお迎えする行事。
すでに迎えたあとで、家にいるんじゃないの?と思うが、細かいことは気にしないが吉。
8月の1日、7日と、13~16日、ちょっと空いて20日と、最後に31日が松明かしの日。
子どもたちにとってこの日は、堂々と花火を楽しめる日でもあり、そういう意味で、お盆を楽しみにしている子どもたちは多い。
そうそう、お盆に里帰りや親戚まわりをすると、家のおばあちゃんやおじいちゃんが、孫に対してお金をくれるのだが、それを「花火代」と呼ぶのも珍しいかもしれない。なにせずっとそう言い続けているので、あたりまえすぎて判断がつかない。

おばあちゃんが子供に手を出させ、その手にお金を置くやいなやそのお金とともに手を包むようにぎゅっと握り、
「ほれ、これで花火でも買っとがん」
厳しいおじいちゃんなんかはこれのあとに、
「無駄遣いすんなぁよ!」
がついたりもする。
親は、いつもすいませんーなどといいながら、わしわしと頭をなでられて嬉しそうな顔をしている子供を眺めるのだ。

ああ、田舎よきかな。

以上、宮古市のお盆点描でした。


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さばね。

あまちゃんの「北鉄」で使われている三陸鉄道北リアス線。
もともと利用者は多くない路線だが、今日はその中でも特に利用者が少ない佐羽根駅(さばねえき)へ立ち寄ってみた。

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道路や民家を背にして山側を向くと、幅1.5mほどの赤い橋がある。ベコンベコンと愉快に鉄板を鳴らしながら渡りきると、ほどなく佐羽根駅だ。
この駅の一日の利用者は、平均して10人程度。しかしいわゆる「秘境駅」ではない。
秘境駅の定義については触れないが、とりあえずすぐ近くまで車で行くことができ(この日も車で行った)その道路周辺には民家もそれなりにあるので、秘境駅とはいえないだろう。
まぁ絵面は秘境といえなくもないけれど。

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橋の下には笹舟が似合いそうな日本の原風景的清流が流れている。

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赤い橋を渡るとすぐに現れる駅へ上がる階段。
バリアフリー?なにそれ美味いの?

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上りきるやいなや汽車が来た。持ってるじゃないか、私。
ちなみに、電車ではなくワンマン運転のディーゼル車両。
JRも含め宮古市周辺には電車はないので、この辺の人は列車のことを「電車」といわずに「汽車」と呼んでいる。
しまいにゃ、よそから来た人が「あ、電車だ」などというと「汽車です」と訂正を入れられることもあるから注意が必要だ。
そしてその訂正を入れた本人がトカイに行き、覚えたての東京イントネーションで「汽車が遅れてー」などと言い、恥ずかしい思いをするというのが古来よりの伝統芸なのである。

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本来の北リアス線は宮古駅からじぇじぇじぇの久慈駅までなのだが、津波で島越駅が復旧工事中。現在は宮古~小本間と田野畑~久慈と分かれて運行されている。
北リアス線の全線開通は2014年の予定。がんばれ三陸鉄道。

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つつましやかな一両編成の車内には7人の乗客がいた。
「あ、乗らないのね。撮り鉄なのね」そんな運転士さんの視線を受け流しつつ列車を見送る。
ちなみにぼくは鉄ちゃんではありません。とねりの庭でも列車や駅は度々取り上げているけれど、違います。
でも駅は好きです。訪れるのも好きだし写真も撮ります。
そうですか。傍から見れば鉄ちゃんですか、そうですか。

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駅舎全景。なんともかわいらしい駅だ。
運行は概ね一時間に一本。駅に着いたドンピシャで現れた列車に、つい「持ってる」と言っちゃったのはそのせい。
それでもこの一時間に一本という本数は、宮古から県庁所在地である盛岡へ向かうJR山田線よりも多い。
がんばってます三陸鉄道。

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ベンチマニアは素通りできないキングオブ駅ベンチ。イームズのサイドシェルに似たデザイン。この配色も好きだ。
駅舎のベンチにひとり座って山の空気を味わうひととき。ああ良きかな田舎駅。
そうですか。鉄ちゃんですか、そうですか。
さて帰ろう。

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線路の下にある小さなトンネルには自転車があった。鍵はかけられていないが、放置自転車ではないだろう。
都会では信じがたいことかもしれないが、ここは由緒正しき田舎。鍵など必要がないのである。

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帰りもまたベコンベコンと音を立てて赤い橋を渡る。
立ち止まり、眩い川に目を落とすと、小さな魚がキラリと光ってみせた。
次は紅葉の時期にでも来ようかね。

以上、三陸鉄道佐羽根駅でした。

そうそう、駅舎には「旅ノート」があります。
立ち寄った際には一筆どうぞ。